SSブログ

『海峡』三部作揃う [日記]

 ブックオフで前から探していた伊集院静の『海峡』三部作のうちの『春雷』と『岬へ』を手に入れ、これで三冊を読破することができました。
 この小説は、彼の自伝的小説で、別名「幼年篇」「少年篇」「青春篇」とも言われています。約二千頁ですからなかなかの長編ですね。わたしは、この小説が醸し出す香りが好きです。
 個人的な感想ですが、全編を通じて、母絹子の主人公高木英雄への慈愛を感じることができます。英雄は、汗水たらして働く女性が好きなようです。常に、身辺には、身を粉にして働く場末の女たちがいて、瑞々しく描かれています。そこにアクセントとなっているのが東京育ちのおキャンな北条美智子です。互いに好きなのに、一線を越えないもどかしさだけで数十頁あります。
 英雄を大きく育てたのは、周囲の大人であることがわかります。リンさん、サキ婆さん、江州、詩人のてふてふ、放浪画家の角水清治、新聞記者の白井、そして加文先生などが英雄を導いているのです。小説の骨格ですね。肉の部分は膨大な挿話として筧浩一郎や宋健将など同年代との危うい話が面白く綴られているわけです。
 五木寛之が九州の炭鉱の香りとシベリアの翳りとすれば、伊集院静には海の匂いがあり、無頼の原点樽「なりふりかまわず」を感じることができるようです。
nice!(0) 
共通テーマ:学校

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。